新留勝行『野菜が壊れる』集英社新書

この本を読もうと思ったのは、ちょうど、農業関係のことが気になることがあって、新書の新刊コーナーで目にとまったためです。

最初のほうで新留さんは「日本食品標準成分表」を引用しながら、野菜に含まれる栄養価がだんだん減少していることを指摘しています。それが結構、印象的でした。有機栽培とか、化学肥料のことが言われるとき、それって安全性のことが問題になるのであって、野菜自体が変化している、という視点が喧伝されることが少ないように思うからです。化学肥料を使っていても、それが残留していて人体に良くない、とは思っても、その部分をのぞいた野菜自体は同じだと思っていた自分に気づいて、とても印象深い部分でした。

「農協として公に推進はできないが、有機肥料グループがしていることは黙認する」(p116)「有機認定を受けるためには、有機認定手数料、実地検査費用、検査員交通費、講習会費用、有機JASマークシール作成代など、数十万円のコストがかかります。つまり、経済的に豊かでない農家は、テストを受けることさえできないのです。」(p195)

この本を読んでいて、知らなかったなあ、ということがたくさんあったのですが、農協が関係するしがらみのようなものが印象的でした。前に、むかし、確信犯でヤミ米を販売していた人を特集していたTVを見たのですが、そういった政治的というか、人の関係というか、たてまえが必要というか、そういったことってムズカシイなあ、と思いました。

「個々の農家、農協、肥料会社や食品加工会社、行政の人々など、みな、それぞれの場面で自分の仕事を一生懸命やり、よかれと思ってしたことが、結果的によくない状況を生んでしまったのです。」(p213)新留さんは、色んなことがあっても、そう選択した人たちは、その時々で悪意があったわけではなくて、よかれと思ってやったんだから、責めるんじゃなくて、前を向いていきましょう、ってスタンスで書かれているのですが、私は、そこに未必の故意はほんとに無かったのかな、とちょっとだけ思ってしまいました。