海老澤敏『瀧 廉太郎』岩波新書

この本を読もうと思ったのは、むかし、サックスのアンサンブルで『荒城の月』を演奏しているものを聞いたことがあって、そのときにとても哀しい曲だなー、と思って、瀧廉太郎にちょっと興味があったからです。副題は「夭折の響き」となっていました。

『荒城月』の「歌詞の内容は明治初年におこなわれたいわゆる廃藩置県政策の結果、各地に出現した荒城、すなわち江戸時代に栄華を誇った城下町の象徴たる城閣の意識的ナ損壊からもたらされた君侯不在で荒れ果てるに任された城を歌うものである」(p226)そうです。ここを読んで連想したのが、前に何かの本で焼畑商業のことが書かれていて、郊外に出店したものの、撤退したときに建物がそのまま残されてしまうというお話しで、なんとなく風景的に似ているんじゃないのかなあ、と思います。

印象的だったのは、今多くの人が瀧廉太郎の『荒城の月』だと思っているものが、実は山田耕筰さんによって改変されたものだ、というような箇所でした。シャープ記号の削除がポイントのようなのですが、私は仮に半音上げたものと下げたものを聞き比べても違うものだとはっきりとは分からないような気がして、で、多くの音痴でない人はそんなことないと思うのですが、そういう微妙な差異を判断できる人は、そういった違いを作った人の意図とか思いとか、そういった部分に敏感になれるのかなあ、と思って印象的でした。