群ようこ『かもめ食堂』幻冬舎文庫

この本を読もうと思ったのは、『めがね』という映画を昨年観た影響です。『めがね』を観た人の何人かは、『かもめ食堂』という映画も観たくなると思うのですが、で、私もそう思ったのですが、なかなか観る機会がなくて、じゃ、原作を読んでみようかとなるのですが、図書館でもなんでかずーっと貸出中で、今月、文庫化ということで読んでみようかな、となったためです。

「目的がなくてもいいんじゃないですか。ぼーっとしていればいいんですよ」(p150)映画『めがね』のキーワードが「たそがれる」だったのですが、私が勝手にそれと関連付けているだけですが、共通しているのかなー、と思って印象的なセリフでした。

主人公の女性はフィンランドで食堂を開いていて、そこにひょんなことから女性が二人加わるのですが、二人目の女性が登場するときに、日本から持ってきた荷物が空港でかで行方不明になる、という展開があります。またまた『めがね』と関連付けてしまって、『めがね』の中で小林聡美さん演じる主人公がもたいまさこさん演じる人に諭されるかのように、自分が持ってきた鞄を置き去りにしていくシーンがあるのですが、「荷物」というものの象徴性を考えてしまいました。もしかしたら、荷物にそういったことを示させるのは、ベタだとか言われてしまうのかもしれないのですが、でも、いいじゃないのねえ、と思ってしまいます。

「いったい私、今まで何をやってきたの。学校を卒業して、ただだらーっと毎日を過して、気がついたら四十過ぎてるじゃないの」(p62)なんか最近漠然と感じる焦燥感のようなものを言い当てられているようで、グサっとくるセリフでした。

さて、このかもめ食堂では、こだわりがあって、それは、おにぎりをお客さんに勧めるというもので、具は鮭とかおかかとか、日本的なものになっています。「今の日本人って、味なんかわかってんのかなあ」(p17)コンビニのおにぎりを食べることはあるけれど、昔、家の人が作ってくれたものとはやっぱり違っていて、誰が作ったか分かっているものってやっぱりおいしいのかなあ、とぼんやりしました。逆に誰が作ったか分かっているとおいしくない場合もあるか、ということは、誰が作ったか分からないものって、食べたときの反応が薄いのかなあ、などなど思ってしまいます。

おにぎりとシナモンロールが食べたくなる本でした。