G・ブルース・ネクト『銀むつクライシス』早川書房

この本を読もうと思ったのは、最近、漁師さんのことや漁業についての報道があって、魚を食べることがたまにあるけど、どうやって捕られて、運ばれているのかとか、そういうことを全然知らなかったためです。副題は「『カネを生む魚』の乱獲と壊れゆく海」となっていました。

「人びとが知っていた魚は、料理の皿に乗って出てくる魚だけだった」(p119)「以前の漁獲調査で、十分な数のライギョダマシがいることはわかっている。自分が猟師を引退するまではもつはずだと、ペレスは考えていた。」(p303)

この本は、密漁船とそれを追跡するオーストラリアの巡視船の攻防部分と、密漁船が捕っていた魚、銀むつが金を儲けることのできる魚だと認知されるにいたるまでと、乱獲によって世界中の海から魚が減っていっていることなどを描いた部分がサンドイッチのように交互に出てくる構成になっていました。

密漁船との攻防の部分では、巡視船、密漁船両者の視点で記述が行われていて、もし、自分が当事者だったら、どっちの船の人でも、相手のことを悪く思うような気がして複雑な感じがしました。そのことの裏には、密漁された魚だろうが、まっとうな方法で捕られた魚だろうが、安かったり、おいしかったりすれば、そんなことなど関係なく(と、いうより、むしろ知らないことにしておいて)、それでいいと思っている自分がいるようで、密漁船側に自分も加担しているかもしれない、という感覚があるからかもしれません。

ショックだったのは、次の部分です。「多くの延縄漁船が魚の保管室にディーゼル燃料を入れて出港し、航海中に燃料と魚を入れ替える」「高級レストランの常連客も、自分たちが食べる魚が燃料タンクに使われていた場所で何週間も保管されていることを知ったら、いい顔をしないはずだ。」(p70)『ダーウィンの悪夢』という映像を見たことはないのですが、評判だけから考えると、上に引用した部分だけでかなりショックなので、映像を見るともっとショックを受けるのだろうなあ、とぼんやりしました。