芳沢光雄『ぼくも算数が苦手だった』講談社現代新書

この本を読んだのは、間違ってしまったからです。本当は『数学につまずくのはなぜか』を読もうと思っていたのですが、本屋さんで講談社現代新書の棚を最近刊行の方から見ていって、算数・数学関連のものでこの本の方が先に出てきて、で、タイトルも著者名もきちんと覚えていなかったので、この本だろうと思って買ったのですが、間違っていました。

この本を読んでいて、いろんなことを思い出したり、考えたりしました。

「『丸覚えしてあてはめる』という悪い癖をつけたくないのです。」(p81)「もうひとつ、本書で強調したかったのは、『プロセスを大切に』ということでした。」(p201)

芳沢さんは、上で引用したように考えていて、本を読んでいても、そういったスタンスは随所から感じられるのですが、自分が中学生だった頃に数学を担当していた先生のことを思い出してしまいました。詳しく書くのは、江戸の仇を長崎で討つようなものなので控えますが、ただ、その先生は数学の先生だったけれど、数学が好きだったり、数学で扱われていることを面白いと思えるような人だったのだろうか、と思ってしまいます。

個人的なことをいくつも思い出したのですが、小学生ではじめて引き算を習ったときに、全然分からなくて、クラスのみんなが先生の問いに正解を答えていくのに、自分だけ分からないというのは衝撃的でした。プリントも全てペケで、今だって、普通の人が「普通に」できる多くのことができなくて、毎日冷や汗をかいて過していますが、みんなができることが自分だけ(と思える感じで)できないことのヤな感じをそのとき初めて感じたんじゃないのかな、と思いました。

算数や数学というと、分からないという印象が強くて、だって文系だもーんって言い訳したくなるのですが、分からないということと興味を引かれたり、好きだということは別のような気がして、それって、数学じゃなくて、相手が人間でも同じじゃないのかな、と思いました。相手のことを理解できなくても、好きになったり惹かれたりすることはあるわけで。芳沢さんは最後らへんで、「好きこそものの上手なれ」(←むかし、谷村有美さんがこんな題名の歌をうたっていましたが、それは置いておいて)という言葉を引き合いに、書かれています(p200)。好きだから長い時間かけて知っていくというのは、相手のことを知ってから好きになるというのとは、一見、順序が逆のようにも思えて、算数・数学との自分の関係は、自分と人間との関係を考えるときに影響したりするのかなあ、とぼんやり考えてしまう本でした。