こうの史代『この世界の片隅に』中 双葉社

『この世界の片隅に』というマンガの中巻を読みました。

「過ぎた事 選ばんかった道 みな 覚めた夢と変わりやせんな」(p34)「みんなが笑ろうて暮らせりゃええのにねえ」(p4)

読んでいて思ったのは、人から笑顔を奪うものはなんなのだろう、ということでした。このマンガは戦時中のお話しです。今現在、TVなんか見ていると、世界中の子どもから笑顔を奪っているのは、貧困だったり紛争だったりだと報じられています。それは、本当に悲惨なことだと思います。でも、そういう中でも、笑顔はどこかにあるような気がして、仮に世の中の趨勢から見て不謹慎だとして笑うことが禁じられることがあったとしても、人間はどこかで笑ってしまえるような気がして、そう思うと、何者も究極的に人から笑顔を奪うことはできないような気がして、苦しい状況下でも、笑うことができたなら、それは反抗の一つになるんじゃなかろうか、などなど考えてしまいました。

「誰でも何かが足らんぐらいで この世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ」(p41)いろんなものを奪われていっても、そこで笑っている自分という存在はクッキリしているんじゃないのかなあ、とこの部分を読んでも思ってしまいました。

「人が死んだら記憶も消えて無うなる 秘密は無かったことになる」(p135)人を想う気持ちはどこからきて、どこへ行ってしまうのだろう、なーんて青いことをふと思うことがありますが、一度にたくさんの人が殺されるとき、その殺された人たちが持っていたであろういろんな想いの数々は一体どうなってしまうのだろう、と思います。そういった想いが想われている人たちの「過ぎた事 選ばんかった道」を変えたかもしれないことを思うと、余計、そう思ってしまいます。