大崎梢『サイン会はいかが?』東京創元社

この本を読もうと思ったのは、成風堂書店シリーズだったためです。今回も成風堂を舞台にした書店の日常性ミステリって感じでした。以下、題名です。「取り寄せトラップ」「君と語る永遠」「バイト金森くんの告白」「サイン会はいかが?」「ヤギさんの忘れもの」。

このシリーズの魅力のひとつは語り手である書店員さんの描かれ方かなあと思います。「被害者を受け持つ教師と、加害者を受け持つ教師。どちらがつらいのだろう。」(p76)「日々たくさんのお客さんと接していると、自分の物差しでは測れない言動に振りまわされることがままある。苛立ちや腹立たしさよりも、漠然とした不安にかられ、途方に暮れる。引きずられそうになる自分に危うさを感じるのだろうか。そしてその"引きずられる先"にあるのはなんなのだろう。」(p127)何か一つの局面で、そこに関わる別の人の心のうちなどを想像しています。想像することって、昨今じゃタイガー・リーさんくらいしか薦めていないかもしれないのですが、大事なことかなあと思います。

「バイト金森くんの告白」では、バイトさんが高校生だったころに、成風堂書店で出会った女の子に一目ぼれしたことが中心なお話しなのですが、あの頃の男の子って、一目ぼれとかを信じていられるものなのだなあとぼーっと思いました。高校生といえば、学参コーナーとか連想しますが、学参コーナーにいるキレイな店員さんに淡い恋心を抱いている男の子たちがどっかにいたりするんでしょうか?ってただの妄想ですけど。

一番印象的だったのは、「ヤギさんの忘れもの」に登場する年配の男性客の次のセリフです。「縁があれば繋がる。なければ途切れる。それだけだ。年を取ると、案外物分りがよくなるもんだよ。」(p249)先日、TVで『銭金』を見ていたら、学生時代に一度フラれたのですが、後々に再開して、今は結婚目前というカップルが出演していました。ある瞬間に幸せになれたなあと思っていても、それが実は後々の不幸せにつながっているかもしれないし、逆にレントゲンに影があっても、悪性じゃないから大丈夫という診断が怪しくても、それが後でいいことにつながっているかもしれなくて、「縁」という言葉は便利ですけど、最後まで生き抜いてみないと、「縁」が繋がっているかどーかって分からなくて、がんばっていくことって大事なのかなあと思って印象的でした。