誼阿古『クレイジーカンガルーの夏』GA文庫

この本を読もうと思ったのは、同僚が前に薦めていたためです。

読んでいて終盤まできて思ったのは、スタンド・バイ・ミーだなあってことです。昨年の今ごろだったと思うのですが、スティーブン・キングの原作の題名がBody(死体)だと知ってショックだったことを思い出します。何かを求めて旅(?)をするのが思春期の夏かなあと思うのですが、そういえば、主人公の一人は散歩することをネタにされていたりしましたが、逍遥することってその心の内を表していることがあるのかなあとかいろいろ妄想しました。

「その米原はどんな駅かと思っていたら、見えてきたのは大阪駅より、神戸駅よりさえ小さい普通の駅だ。」(p133)その「旅」の途中で電車を乗り換える駅なのですが、小さくて拍子抜けしています。とても個人的な印象なのですが、米原駅って不思議な雰囲気の駅だなと思います。乗り換えの関係で、米原のホームでちょこっとエアポケットのような時間ができることがあるのですが、電車を待っているのは自分なのに、雪がしんしんと降っていたりすると、米原駅が何かを待っているように感じられて、おまけにそこに含まれる一抹の寂しさのようなものも感じられて、不思議な感じがします。夜中に車窓から見る自動販売機のぼーっとした明かりに似ているかなとか思います。

これから夏休みシーズンとなりますが、もう夏休みのない自分としては、そういった日常の眼で見ている風景の中にこの本の中に出てくる男の子たちのように夏休みというある種ハレの中にある人々が映っていることがあるかと思うと、事件は会議室、じゃなくて、ドラマは日常の中で起こっているのかなあとか連想してしまいました。

あと、この本での小道具っぽい使い方をされるものたちにちょっとグッときました。例えば、「調子外れな鼻歌でオフコースの『さよなら』を口ずさんでしまい」(p259)という箇所があるのですが、北海道へ行ってしまう友達の飛行機を見送るシーンです。もうすぐ外は白い雪、このフレーズは書かれていないのですが、『さよなら』と北海道から連想されてしまって、そこに「もうおわりだね」という言葉が(全部、私の頭の中の妄想ですが)重なってきて勝手に雰囲気を構成して面白いなあと思います。主人公たちの部屋でかかっている音楽がTHE LAST RESORTだとか(p75)。イーグルスの歌は知らないのですが、「最終手段」が流れているシーンがその後の展開を示唆しているのかなあとか思って、そういう箇所が多くて面白かったです。

地味な本でしたが、都会と田舎の対照とか考えさせられて面白かったです。