松永和紀『メディア・バイアス』光文社新書

この本を読もうと思ったのは、体調が思わしくなくて、気分も落ち込み気味だったので、散財してちょこっとスッキリしようかなあと思ってたときに目について買ってしまったからです。

題名だけ見ると、またメディア・リテラシーの本かとか思ってしまうのですが、ちょっと違う感じの本でした。メディアが正しい情報を伝えていないことに一応焦点はあたっているのですが、眼目は「正しい/正しくない」科学情報を見分けることにあるように感じられました。

この本を読んでいて気になったのは、「だれでも」とか「だれもが」という言い回しです。単なるイチャモンですが、医学・生物の学術論文データベースがあるのだから、だれでも情報の真偽を確かめられるかのように書かれていたり、ppmppbという単位の感覚から科学的に正しいとされている結果に対してもおかしいとピンとくるはずだと言っている風に感じられる箇所がいくつかありました。別に科学的知識をもたない「一般の人」を上から見ているわけではないのでしょうけれど、普通に生活している中で、そういった面でピンとくるのってムズカシイのではないのかなあと思いました。

確か、吉川さんという人の本だったと思うのですが、リスク・コミュニケーションの入門書のようなものを読んだことがあって、そこでは、リスク評価、リスク認知と分けた上で両者をつなぐものとしてリスク・コミュニケーションがあげられていたと記憶しています。科学者(専門家)がある物質や出来事のリスクを評価するのですが、一般の人がそのリスクをどう認知するかには差が出てくるので、リスク評価とリスク認知の差を埋める、つまり、リスクを正しく捉えるためには、それを伝えるリスク・コミュニケーションという側面を考える必要があるという説明だったと思います。専門家と素人の間で情報の非対称性が前提されているのですが、松永さんの本を読んでいると、素人の側でもリスク評価を部分的に担わなくてはいけないと言われているように感じられて、しんどいでぇ~と思いました。やっぱり素人の側に知識がないことの怠慢を責められているような気がして、本の後半で、科学者自身が科学者としての功績にならないから他の似非科学を追及しないって感じの部分があるものの、ずっと怒られているような気がして胃が痛くなる読書でした。

とかなんとか書いたのですが、なんとなくこの本はいい本のように思われて、と、いうのも昔、中西準子さんの『水の環境戦略』という本を読んだことがあるのですが、科学というか学問を現実的な解決に向けて(松永さんの本の言葉を借りればコストとベネフィットを冷静にはかってって感じでしょうか)使っている印象がして、そのやり方というか語り口も地道に積み上げている印象を受けて、うまく言えないのですが、誠実な感じがしてこの人は信用できるかなあと思ったためだと思います。

最後に、この本の参考文献は松永さんのホームページ上でリンクがはられているようです。

松永和紀さんのページ