ロバート・ウェストール『猫の帰還』徳間書店

この本を読もうと思ったのは、ウェストールさんの本だったためです。

第二次大戦中、猫が主人の元へと旅をしていって、その過程でかかわりをもつ人々のこととか書かれていて、戦争のことが伝わってくるお話でした。

「ストーカーは電話を切り、ふたたび双眼鏡をとりあげた。影がなくなっていたらどうしよう。面倒なことになるぞ。」(p29)これは敵の機影を見た人の気持ちです。報告しなければ、本当に襲来していたとき、手遅れになると思うのですが、こう思ってしまうのって、厳しい統制とかしかれているときのような気がして、他人の顔色をうかがうような状況になっているときって、致命的な情報がきちんと伝達しにくい状況なのかなあと思いました。

p70あたりで、主人公である猫の飼い主の奥さんが旦那さんを見て、人違いだと思うシーンがあるのですが、それは戦争によって旦那さんの雰囲気とかが大きく変わっていたためでした。エンデの『モモ』の中で、モモが友人である清掃人を見かけたものの、せかせかしていて、多分、違う人だろうと思うシーンがあったと思うのですが、それは「灰色の男たち」に時間を奪われていたからで、『猫の帰還』の最後のほうで、この旦那さんが戦争が自分から奪っていったものについて考えていますが、人が大きく変わってしまうのって、何かを奪われることが理由になるのかなあと思いました。

この本には、戦闘機の空中戦を見上げているシーンが何度か出てきますが、そういった描写を読んで、男の子たちって、胸を躍らせたりするのだろうかと思いました。敵機を撃墜した兵隊さんが、仲間に喝采で迎えられる箇所とかあって、他人の死を喜ぶことについて考えてしまいました。

「戦争っておそろしい、ポルトガルが参戦しませんように」(p233)戦争によって精神的に参ってしまっているかのようなイギリス人を見た女性はこう思っています。なんてことない記述ですが、この本の中で、戦争のおそろしさを一番納得できたのは、この一文でした。