あさのあつこ『バッテリー』角川文庫

この本を読もうと思ったのは、『天のプラタナス』を読んで、野球ものってやっぱり面白いのかなあと思って、野球ものといえば、数年前からこの本が有名なのですが、読んだことがなかったので読んでみようかなと思ったためです。

筋としては、孤高の天才ピッチャーである主人公(少年)とそのまわりの人々って感じでした。

印象的なセリフがいくつかありました。「巧は、そんな弱い子じゃないわ。」(p40)これは主人公の母親が言ったことなのですが、以前、『京都地検の女』というドラマで、名取裕子さん演じる鶴丸検事が、被疑者のセリフを「違う!」(杉浦記者と混同しているかも。)とさえぎるシーンを思い出させるものでした。その被疑者は自分がだましていた女性のことをあいつは強いから大丈夫だってことを言っていて、検事は、相手のことを強いとか言うのは、自分に非があることをごまかしているに過ぎないって思っているようでした。

この本には、相手が自分のことを分かってくれないし、言っても分かってもらえないし、と考えたり口に出したりする人が多く登場するのですが、じゃ、そういった人たちが、本当は分かって欲しがっているのかというと、それも怪しくて逆に分かられたら、責めるというかたちで相手に甘えている自分のことが露呈してしまって困ってしまうのではないのかなあとか、そんなことを思いました。

「じいちゃんに、甲子園に行きたいなら他人の話を聞くより、あそこで野球している自分の姿を想像してみぃて言われた」(p70)という箇所があるのですが、自己啓発とかでも、自分が成功している姿を思い浮かべなさいとかいっている人とかいるかと思うのですが、『すいか』というドラマの中で、浅丘ルリ子さん演じる教授が小林聡美さん演じる銀行(信金かも)員に、今いる下宿で生活している自分を想像することができたかしらって感じのセリフを言っていますが、想像したり、思い描いたりしなくても、なんとなく(しかもいい方向に)なっていくことってあるんじゃないのかなあとぼんやり思いました。

あと、本筋とは関係ないのですが、『バッテリー』は全6巻なのですが、5巻までしか文庫になってない状態で映画化なんて、角川書店の戦略?って思ったのですが、おととい、私の行きつけの本屋さんに6巻目の文庫が入荷していました。でもでも、その後のお話で『ラストイニング』とか出ているよーで、なんだかなあと思ってしまいます。