坂木司『仔羊の巣』創元推理文庫

この本を読もうと思ったのは、『青空の卵』に続く「ひきこもり探偵」シリーズの第2弾だったためです。シリーズ完結の『動物園の鳥』文庫版は10月に出る予定のようです。

この本には3つの短編が入っていました。「野生のチェシャ・キャット」では、語り手が同僚と友人の境はどこからだろうと考えていました。先日、ある先輩に仲の良い同期がいるのかと聞かれて、答えに窮してしまいました。で、同期とか、同僚とかとの関係ってどういうものなのだろうと考えていたので、この話数の流れが印象に残りました。同期はみんなバラバラの場所にいるし、今勤めている会社は転勤・異同が多いので、今現在の関係が長期的に続く見通しもあんまりなくて、人間の関係というのは、なんなんだろうなあとぼーっと思ってしまいます。

あと、語り手が駅などで鳴っている誘導音に気づくシーンが印象に残りました。個人的に誘導音にはじめて気づいたのは京都御苑のトイレが鳴っているのを聞いたときでした。最初は、どーして鳴っているのか分からなかったのですが、毎日その前を通るうちに目が見えないとしたら、便利かもしれないと思うようになりました。でも、同時に、その音がトイレを示しているとどこかで知らなければ、分からないとも思って、そういった知識はどこで習得するようになっているのだろうとも思いました。

「優しくしてあげればいいんだよ。困っている人には、声をかけてあげればいい。なに、簡単なことじゃないか。一番近くにいる人からはじめて、まだ手が届くようだったら、もう少し先の人に優しく。そういう風にしていけば、いつか遠くにも届くだろう?」(p224)これは語り手の祖母のセリフですが、Think globally, act locally. という環境保護にまつわるスローガンってこういうことかなと思います。でも、おばあちゃんのセリフの方が得心がいくなあと思いました。

最後に、この本にはものを食べるシーンがふんだんに出てくるのですが、お茶をすすりながら和菓子を食べるシーンとかグッときました。今からお煎餅でも買ってこようかなと思います。