四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書

この本を読もうと思ったのは、次のような理由からです。「かわいいって言え!」ここ数ヶ月で二人の人がこんなことを口にするのを耳にしました。そこで思ったのは、彼女たちは「かわいいって言え」とは言えても「綺麗(あるいは美人)って言え」とは言えないだろうなということです。「かわいい」と「きれい(あるいは美しいでしょうか。)」という言葉は両方とも人のプラスの側面を形容しているようでありながら、その相違はなんなんだろうと思いました。また、「いつもここから」という芸人さんがいますが、ネタに「かわいいねぇ~」を連発するものがあります。他人の行動をあげて「かわいいねぇ~」と評することで皮肉っているのですが、そういったところからも「かわいい」ってなんだろうと思っていたので読んでみました。

印象に残ったのは、次のようなくだりです。「美しい」は触れることの禁忌と不可能性と結びついてる一方で、「かわいい」には親しげでわかりやすく、容易に手に取ることのできる心理的近さが構造化されているそうです。(p76)一番最初にあげた発言を考えると、自分のことを「美しい」ではなく、「かわいい」と形容するように他人に強要することは、完全性ではなく、むしろ、ある種の不完全な部分の許容を要請することを含んでいるために抵抗が少ないのかなあと思いました。

あと、この本の中でいまいち分からないのは四方田さんが「セーラームーン」のことを「かわいい」と言っていたことでした。ポケモンやキティちゃんを「かわいい」というのはなんとなく分かったのですが、「セーラームーン」はちょっと分かりませんでした。