岡田英弘『歴史とはなにか』文春新書

この本を読もうと思ったのは、先日読んだ本の中で岡田さんの『世界史の誕生』のことが紹介されていて、面白そうだなと思ったのですが、近場の本屋さんでは切れていたので、かわりにということで読んでみようかなと思ったからです。

多分、答えとしては、歴史は(科学ではなく)文学であるということだと思うのですが、一方で「道徳的にいいか、悪いかは、当事者だけが問題にすることだ。(略)普遍的な歴史を書くのがしごとの歴史家は、そんな議論にかかわりあっているひまはない。」(p152)とも書かれていました。昔、ある講義の中でフランスの社会学者(?)アルバックスという人の「集合的記憶」という考えに関する本の一部を読んだことがあるのですが、その時に、歴史を書く人などの背後仮説から独立したものが想定できるとして、それは年表のようなものではないのかと担当の先生がおっしゃっていたことを思い出しました。(重箱の隅をつつけば、年表に使われる暦にも文化や社会などの影響があったりするとは思うのですが。)構築主義でいうところのいわゆるOG(Ontological Gerrymandering)問題って気になったりしないのかなと思いました。

確かに、最後の部分で「よい歴史」「悪い歴史」ではなくて、「よりよい歴史」「より悪い歴史」があるだけだと述べているのですが、歴史家がめざすのは「歴史的真実」だけであり、それは「史料のあらゆる情報を、一貫した論理で解釈できる説明」のことだと述べていて(p220)、それを書けるのは、結局、経験豊かな人間だけだという結論のようでした。で、私は不遜にも、この部分を「それは自分のことで、自分がよりよい歴史を書けるのだ」といっているように読んでしまって、はあ、そうですかとぼんやり思ってしまいました。

むかし、E.H.カーという人の『歴史とは何か』を読んだときほど面白いと思えませんでした。