池澤夏樹『スティル・ライフ』中公文庫

「ハロー、エンデバー」加納朋子さんのある小説の一番最後のセリフは確かこんな感じでした。エンデバーはスペースシャトルです。宇宙にいるシャトルに呼びかけることは、そこからの返事を期待しているわけで、返答があることで、宇宙からこの地上を見つめている視点の存在を確認できるような気がします。

「大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。」(p10)巻末の解説で須賀敦子さんは、この部分を最初にとりあげています。先述の「ハロー、エンデバー」を読んだとき、なんとも言えない感じがしたのですが、それは、池澤さんの書かれているところの二つの世界をつなげようという切実な想いのようなものが、この単純な言葉の中に託されているように勝手に感じたからかもしれません。