井上ひさし『十二人の手紙』中公文庫

この本を読もうと思ったのは、何の本だったかもう忘れてしまったのですが、何かの本を読んだときに触れられていて、面白そうだなと思ったので、買ったのですが、これもまた仁和寺の法師いつもの通り、読んでなかったので読んでみました。

この本では、ほとんどの文章が手紙の形をとっているのですが、いずれの文章からも、本音の部分というか、人間の暗い部分を隠しているのではないかという不安が感じられて、読んでいて落ち着きませんでした。手紙っぽい語りかたが、そういった不安を与えるのかなと思うのですが、そう考えると、今、ネット上でいろいろな文章(この文章もそうですが)が流れている状態は、読んでいるであろう、見も知らずの人を想定しているわけで、文字づら以外は分からないだろうという、いわゆる匿名性を前提とした上での「偽り」が溢れている状態なのだろうかと思ってしまいました。

騙したり、騙されたり、それに怒ったり、傷ついたり、いろいろあるのですが、そこには、人と人のつながりがあるように感じられて、騙されていることにも気づかないフリをしたり、気づいているのに傷つかないフリをしたり、怒ることさえ諦めてしまっているのって、つまらないというか、寂しいことなのかなと、そんなことを考えてしまいました。