俵万智『あなたと読む恋の歌百首』文春文庫

高校生の頃、俵さんのエッセイにはまった時期があって、ちょっとご無沙汰していたので、読んでみました。百一個の恋愛に関する短歌とそれについての俵さんの解説?、俵さんのあとがきと野田秀樹さんの解説でこの本はできていました。

印象に残った歌はいくつもあったのですが、稲葉京子さんの「やがて死が堰き隔てむに忘失の刻あり人は生きて別るる」は不思議だなあと思いました。人が別れるのは、死ぬことじゃなくて、生きたまま関係を終わらせるといった風に解説されていました。で、北村薫さんの本でレイモンドチャンドラーの小説のセリフについて考察されていたことを思いだして、不思議だなあと思いました。そこでは、確か、Partir, c'est mourir un peu.(Saying good-bye is to die a little.さよならはほんの少し死ぬことだ。)というセリフについてun peuが時間的なちょっとなら、英訳されるときに for a whileとならないとおかしいって具合で議論されていたと思います。なんか、別れることと死ぬことってよく関連づけて考えられることなんだなあと不思議な感じがしました。

昔、俵さんのエッセイにはまったのは、(おかげで、彼女が大学生の頃、駅のアナウンスのバイトをしていたこととか、橋本高校に勤務していたとか、旅先で手紙を出せるように切手を鞄に忍ばせているとか、覚えていて、なんだかなあと思ってしまいます。)たった31文字の中で自分のことを出せる世界があるということに魅せられたからだと思います。と、言っても短歌を作ることはできないのですが。嬉しい時には、嬉しいと、嫌なときには、嫌だと素直に出せる人のことを羨ましく思うのは、自分がそういう風になりたいからなのかなと思ったりします。