村山由佳『星々の舟』文春文庫

この本を読もうと思ったのは、直木賞受賞作の文庫だったからです。村山さんが直木賞を獲った直後だったと思うのですが、『トップランナー』という番組に出ているのを見て、そのときに、私のサイン会に来てもらう人は生きにくそうな感じの人が多いと言っていたのを覚えていて、生きにくいと感じている人が好んで読む小説の世界に興味があったからです。

短編連作だったのですが、一話目でお葬式のシーンがあって、何度か見ず知らずの人のお葬式の出棺の場面に出くわしたことがあるのですが、そのとき、とても悲しそうにしている人もいれば、全然我関せずの人もいて、その人との関係の濃淡がハッキリとでてしまうものなのかなあと思ったことを思い出しました。きっと、そこには、参列することができないというカタチで関係が表れることがあるとも思います。

三話目では、男の人を惹きつけてしまう(?)女性視点でした。私は、街でキレイな人とすれ違うときに、いつも羨ましいなあと思ってしまいます。きっと、あの人の人生はこれまでもいいことがたくさんあって、これからもたくさんあって、楽しいんだろうなあって感じで。でも、人目を引いてしまう人ってそれはそれで大変なこともあるのかなとこの話数を読んで思いました。

「家族」がこの小説のテーマのようなのですが、家族の秘密といったら、不倫しかないのかなあと思いました。んで、なんか軒先に風鈴を吊るしている光景って減っているような気がするのですが、もしかして、それって、風鈴の音を聞くことによって、家族を裏切っている負い目を無意識に感じる人が多くなっているからかなあと妄想してしまいました。(冷静に考えれば、風鈴という名前から不倫を連想する人って、そんなにいませんね。)

一番最後の話数は、ちょっと読むのが辛かったです。その最後らへんで、高校生の男の子が「どうして誰も、戦争はいやだって言はなかったんですか?」と問うのですが、それに対して語り視点の登場人物が「あんたらは、頼む。ちゃんと声をあげてくれ。」と思うシーンがあります。私は「あんたら」の側に立っていると思うので、自分にできるのかなと思いました。あと、この男の人がしなかったことでいろいろなことを後悔しているのですが、月並みですが、自分は後悔の少ない人生を生きたいなあと思いました。