マンガの感想

加藤元浩『Q.E.D.iff』6巻 講談社

「自分だけが救われたい ここは凍えるような世界」(大木彩乃「冷たい世界」) この巻収録の「地球に落ちてきたと言っている男」を読んだ時、自分の中に再生されたのは、冬の冷たい風景でした。感触としては、肌を刺す寒さが感じられます。 と、言うのもシリ…

加藤元浩『C.M.B.』34巻 講談社

この巻には「消滅飛行」「マリアナの幻想」「古屋」の3話が収録されています。 「消滅飛行」と「マリアナの幻想」はともに老人の「後」を追いかけてお話が展開しています。 「自分より年上の者が望んで旅をしてるのに お前さんはモリオのなにを知ってるんだ…

原作:草水敏、漫画:恵三朗『フラジャイル:病理医 岸京一郎の所見』4巻 講談社

このマンガは病理医である岸京一郎を主人公としています。でも、私は主人公を積極的に描いていないマンガだと感じながら読んでいます。細かく描かれているのは、彼を取り巻く人々。周りが明瞭になることで、それらを輪郭にして主人公である岸京一郎という人…

芦奈野ひとし『コトノバドライブ』3巻 講談社

「今はなき あの星からのdying message ほうきに乗った 魔法使いも 悲しみエスコート 」(熊木杏里「冬空エスコート」) 「香る雪のこと」という話数で主人公は雪について思いを馳せています。 「音がない」(p.99) ふと目を覚ました深夜。まわりの静けさが…

川崎昌平『重版未定』河出書房新社

『重版未定』は中小出版社を舞台に編集者たちの悲喜こもごもが描かれるコミックエッセイ(完全フィクション?)です。 「小見出しなんて読者を甘やかすだけだぞ・・・甘やかされて育った読解力のツケを払うのは結局俺たちだ」(p.174) お話はある編集者を主…

加藤元浩『Q.E.D.iff』5巻 講談社

「歩き続けて疲れたでしょう 足を止め振り向いて ねえ あたしに気がついて 」(Salley『あたしをみつけて』) この巻には「イーブン」「不完全な密室」が収録されています。どちらもワトソン役の少女の父親の人間(刑事)性が際立つ話数となっています。 こ…

加藤元浩『C.M.B.』33巻 講談社

「ほんとうに哀しくなるのは 日常に戻る 49日すぎからだと友達は言った」(辛島美登里「Two of us」) この巻に収録されている「いつかの文学全集」では、夫を亡くした女性がハワイへ旅立ちます。観光には目もくれず、ホテルの部屋に入った彼女にはやりたい…

緑川ゆき『夏目友人帳』21巻 白泉社

「強くならないと なんにも守れないよ、周一さん」(『夏目友人帳』17巻) この21巻には特別編17として「伸ばした手は」が収録されています。本編で時折、夏目くんと絡む名取周一の若かりし頃を描いた短編です。その周一さんは同級生の振る舞いを見てこんな…

天野こずえ『あまんちゅ!』11巻 マッグガーデン

「その夢中を止めないでね」(「太古の森」p.167) このセリフを読んだとき、私はずいぶん昔に似た言葉を耳にしたような気がしました。でも、なかなか思い出せずにいました。 この巻で主人公一行は沖縄を訪れます。美しい海でダイビングを楽しむ姿とともに、…

加藤元浩『Q.E.D.iff』4巻 講談社

この巻には「碧の巫女」「H.N.(ハンドルネーム)」が収録されています。 「燈馬さんはロトカ・ボルテラ方程式をご存知?」(「碧の巫女」) リゾートホテル建設をめぐって人々が対立する島で測量士が行方不明となります。彼の行方を尋ねられた巫女は予言に…

加藤元浩『C.M.B.』32巻 講談社

この巻には「灯火」「混信」「邪視除け」「魔道の書」の4話が収録されています。 「身勝手は学問の本質だろう!」(「灯火」) 人類の来歴を明らかにする可能性を持つ化石がイランで発見されます。それを国外へ持ち出そうとする英国の学者はイラン政府と対立…

緑川ゆき『夏目友人帳』20巻 白泉社

「僕が君の未来だなんて 悲しくて 切なくて 閉じたアルバム 」(柴田淳『ちいさなぼくへ』) 第七十八話で関わりをもった妖の術によって夏目くんは「若返り」ます。肉体が若くなるだけではなく、記憶も混乱をきたします。 「近づかないでくれたぬきのおばけ…

岩永亮太郎『パンプキン・シザーズ』20巻 講談社

「まっ先に―『人を殺せばそれを悔やむハズだ』って考える人間なんだなって」 この巻の冒頭、殺人兵器としてつくられた人物とその傷を修復する医師との会話シーンがあります。人殺しが悩んでいるのを見た時に、その悔いの理由はいくつかあるのに医師がそれを…

篠原ウミハル『図書館の主』12巻 芳文社

「私が学校に来るのは月水金の3日間でね 時間も10時から4時までだから・・・朝は会えないの」(p.12) 児童書専門の私設図書館タチアオイ図書館を舞台に描かれる司書と本のお話の12巻。この巻は学校図書館がメインとなっています。 従来からいた司書教諭とは…

加藤元浩『Q.E.D.iff』3巻 講談社

この巻には「三人の刺客」「自転車泥棒」が収録されています。 「三人の刺客」の扉は『チャーリーズ・エンジェル』をイメージしているのかな?それはさておき、「自転車泥棒」は探偵役の少年がかつてかけられた嫌疑に関するお話。子どもの頃に少しだけ滞在し…

加藤元浩『C.M.B.』31巻 講談社

この巻には「地獄穴」「ゴーストカー」「動き回る死体」「第27回探偵推理会議」が収録されています。 「地獄穴」は土砂すべりが元で露わになった洞穴をめぐるお話。地獄穴出現と時を同じくして村からは失踪者が出ます。TVの取材も入り、村おこしの一環として…

東村アキコ『かくかくしかじか』2巻 集英社

「ごくたまに/ほんの一本自分が納得いく線が見つかる瞬間がある」(p.86) また『漫勉』の話ですが、藤田和日郎さんだったか、さいとうたかをさんの回だったかで下書きの線には責任がないという主旨の話がされていました。 「真っ白なキャンパスに筆をのせた…

東村アキコ『かくかくしかじか』1巻 集英社

先日、浦沢直樹さんの『漫勉』というTV番組を観ました。番組の構成は、予め対象となる漫画家の執筆過程を複数の定点カメラで撮影し、その映像を浦沢さんと撮られた漫画家が一緒に見ながら対談する、というものです。再放送でしたが、ちょうど東村アキコさん…

加藤元浩『Q.E.D.iff』2巻 講談社

この巻には「素っ裸の王様」「殺人のかたち」が収録されています。 「形っていうのは当たり前のように目に見えているけど/想像できないものを隠してるんです」(「殺人のかたち」) 自分の言葉、と言ったときにそれを「自分の」と言うために必要な条件は何で…

加藤元浩『C.M.B.』30巻 講談社

この巻には「ドリームキャッチャー」「宗谷君の失踪」「JOKER」「ピーター氏の遺産」が収録されています。 突然失踪してしまった大学の友人を探す「宗谷君の失踪」。彼はなぜいなくなってしまったのか。 「お前が納得せんだけぜよ」(「宗谷君の失踪」) 中…

たなかのか『すみっこの空さん』8巻 マッグガーデン

この巻収録の「サンタクロース」という話数にアドヴェント・カレンダーが登場します。アドヴェント・カレンダーと言えば『ソフィーの世界』で有名なヨースタイン・ゴルデルに『アドヴェント・カレンダー』という小説があります。『ソフィーの世界』→哲学→『…

施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』2巻 一迅社

「まだ一冊も/読んでないよ」(p.9) 本を読まずにお手軽に読書家を気どって発言してみたい、読書家に周りから見られたい女、バーナード嬢(本名:町田さわ子)。『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール、筑摩書房)を地で行くかの…

加藤元浩『Q.E.D.iff』1巻 講談社

『Q.E.D.』は50巻までで完結し、掲載紙の変更などと相まって『Q.E.D.iff』(iffはif and only if=⇔、同値を意味する)と改題後の最初の巻です。 この巻には「iff」「量子力学の年に」が収録されています。 「量子力学の年に」は長い年月をへてある新興宗教…

加藤元浩『C.M.B.』29巻 講談社

この巻には「プラクルアン」「被害者、加害者、目撃者」「椿屋敷」「自白」が収録されています。 一番身につまされたのは「プラクルアン」でした。 亡くなった大富豪の遺物の中から出てきたタイのお守りプラクルアン。遺族たちはそれを貴重品だと思いますが…

新川直司『四月は君の嘘』11巻 講談社

「君よ 永遠の嘘をついてくれ いつまでもたねあかしをしないでくれ」(中島みゆき「永遠の嘘をついてくれ」) 国語の時間に『枕草子』を習うため、「四月は君の嘘」というフレーズを見た瞬間から「がをかし(がよい、が趣深い)」とほぼ自動的に補って認識し…

たなかのか『すみっこの空さん』7巻 マッグガーデン

この巻には「ちょうわ」「さくりゃく」「プレゼント」「ひみつ」「ちゅうしん」「えんきんほう」「あした」が収録されています。 「誰も聴いてないのに歌うことって意味あるのか―?」(「ちゅうしん」p.109) 何もない町の駅前で歌う青年について空さんのイ…

岩永亮太郎『パンプキン・シザーズ』19巻 講談社

「そう、敵も人間なんですよね。だからちゃんとモノを考えて反応してくれるはずです。」(『機動戦艦ナデシコ』第20話「深く静に『戦闘』せよ」) この巻の中で主人公側は圧倒的技術差を誇る敵の強力兵器を3輌撃破します。難攻不落と思われた兵器が破壊され…

緑川ゆき『夏目友人帳』19巻 白泉社

「かえりたい あなたに ”元気でいるよ”とはずむ声を聞かせて」(辛島美登里「あなたにかえれない」) いきものがかりの『帰りたくなったよ』をはじめて聞いたときのことをよく覚えています。サビの「帰りたくなったよ」の部分だけを聞いているのに、自分もど…

加藤元浩『Q.E.D.』50巻 講談社

この巻には「観測」と「脱出」が収録されています。 「観測」は加速器など物理の実験施設で発生した事故のお話。複数箇所の施設に妨害工作が為されていく。それらの施設に共通することとは・・・。 物理の実験施設といえば多田将さんの『すごい実験』(イー…

加藤元浩『C.M.B.』28巻 講談社

この巻には「キジムナー」「空き家」「ホリデー」が収録されています。 「誰か!! 誰か助けて!!」(「ホリデー」) 「ホリデー」はアフリカにある架空の国でおこるジェノサイドを停止させるために国連安保理で決議を得ようとする話。先日読んだ『手術の前に死…

磯谷友紀『海とドリトル』2巻 講談社

「わたしにだって そういう時期は あった」 かつては抱いていた研究への情熱。それはもう冷めてしまった。研究室に残っている理由は、ある人の側にいたいからという不純なもの。自分の往き方を考える登場人物がいます。 「たのしーなー」(p.45) 過去の自分…

天野こずえ『あまんちゅ!』9巻 マッグガーデン

川上弘美さんの『センセイの鞄』という小説に「センセイ、帰り道が分かりません」というセリフがあります。私は、会ったことも話したこともないある方にこう問いかけたくなる時があります。 中谷宇吉郎センセイ、それにはなんと書かれているのですか? 『あ…

麻生みこと『海月と私』3巻 講談社

『海月と私』は小さな旅館を舞台にしたマンガです。確かな腕を持つ料理人が営む宿に突如現れた正体不明の美人仲居。その料理人・仲居コンビと宿泊客の交差が描かれます。と書くとお昼の連続ドラマにありそうな設定に聞こえます。実際、読みながら加藤貴子さ…

加藤元浩『Q.E.D.』49巻 講談社

『Q.E.D.』49巻には「無関係な事件」「ラブストーリー」が収録されています。 「無関係な事件」は就活中の大学生が遠く香港で起きた殺人事件に巻き込まれていくお話。使われているトリック自体は目新しくありませんが、このお話の白眉は大学生の気持ちがたど…

加藤元浩『C.M.B.』27巻 講談社

『C.M.B.』27巻には「アステカのナイフ」「爆破予告」「幸運」そして番外編「大入道の屏風」が収録されています。 「オレは自分だけの力で生きてきた!あいつらはなぜそれができない!?」 「幸運」で殺人の容疑者として拘留されている人物がいったセリフです…

たなかのか『すみっこの空さん』6巻 マッグガーデン

この巻には「らっかさん」「スイカ」「ゆううつ」「すくい」「B面」「A面」「とびら」が収録されています。 「夏が楽しみじゃなくなったのっていつ頃からだったかなー」(「スイカ」p.31) 亀のプラトンのご主人の家を訪れた友人がふともらした言葉です。夏…

吉田秋生『海街diary6:四月になれば彼女は』小学館

この巻には「いちがいもんの花」「逃げ水」「地図にない場所」「肩越しの雨音」「四月になれば彼女は」が収録されています。 「追いかけても 追いかけても たどりつけない幻の水かあ なんだかせつないね」(p.53) 逃げ水、と聞くと天野こずえさんの『ARIA』…

磯谷友紀『海とドリトル』1巻 講談社

このマンガを読もうと思ったのは、『本屋の森のあかり』の著者である磯谷さんの新刊だったのと、内容が海洋生物学に関係するもののようで興味をひかれたためです。 「全部おもしろいよ」(p.38) 主人公である女子大生は富士山登山の途中で変な2人組に出会い…

岩岡ヒサエ『孤食ロボット』1巻 集英社

このマンガを読もうと思ったのは岩岡ヒサエさんのマンガだったためです。『土星マンション』から始まってなんだかんだ好きなのです。 ある居酒屋チェーン店で食事をし3000ポイント貯まった単身者(独身に限らないのがミソです。別居中も含まれます。)は現金…

中村尚儁 『1/11』9巻 集英社

「そしていつか・・・母さんみたいな 強い人間になりたい」 『ヴァンドレッド』というアニメが昔、ありました。その中で撃墜された戦闘機のパイロットが生死の境をさまようという話数があります。意識混濁の中で彼女の子ども時代が回想されていきます。その…

施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』一迅社

このマンガを読もうと思ったのは、SFを好んで読む人について知りたかったためです。SFの有名どころも知ることができるかな、という下心もありました。 ところが、バーナード・ショーをバーナード嬢だと思ったために自らをバーナード嬢と呼ぶよう強要する女(…

加藤元浩『Q.E.D.』48巻 講談社

『Q.E.D.』というマンガの48巻目を読みました。この巻には「代理人」「ファイハの画集」が収録されています。 「代理人」はある覆面作家のエージェントが殺害されるというお話。なぜ彼は殺されたのか、彼が殺されて得をするのは誰か。 最初は、エージェント…

加藤元浩『C.M.B.』26巻 講談社

『C.M.B.』というマンガの26巻目を読みました。この巻には「ゴンドラ」「ライオンランド」「兆し」が収録されています。 「ゴンドラ」の冒頭を読んで何故か連想したのが『刑事コロンボ』。「ゴンドラ」冒頭がTVの料理番組で、そのホストがこの話数の犯人。と…

新川直司『四月は君の嘘』9巻 講談社

『四月は君の嘘』というマンガの9巻目を読みました。「舞台に立つのが怖いって感じるのは 一生懸命な証拠だよ」TVを観ていると、小学生くらいの子たちが物怖じせずに大人と話している光景があったりする。そうでなくとも、舞台の上で観客を前に演じる姿があ…

高橋しん『「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」』白泉社

この本を読もうと思ったのは、評判が良いようだったためです。「そもそも本屋とは何を持って・・・本屋というのだ・・・」(p.117)本屋さんを開いた夫に先立たれた女性が主人公です。「ばかか!飲まず食わずで本を読みまくった!?」(p.66)夫が死んだのは結…

岩岡ヒサエ『なりひらばし電器商店』2巻 講談社

『なりひらばし電器商店』というマンガの2巻目を読みました。「変って言われるだけでちょっと相手が遠くに感じる」(p.155)主人公と友人になった女子大生2人が主人公抜きで会話しているシーンがこの巻で一番印象に残りました。上に引用したセリフが言われて…

岩岡ヒサエ『なりひらばし電器商店』1巻 講談社

『なりひらばし電器商店』というマンガの最初の巻を読みました。このマンガを読もうと思ったのは、岩岡ヒサエさんのマンガが好きなためです。上京した女子大生を主人公にその友人関係などが描かれていく、のかな。「生きてりゃ色んなものの世話になるわ」(p…

加藤元浩『Q.E.D.』47巻 講談社

『Q.E.D.』というマンガの47巻目を読みました。この巻には「陽はまだ高い」「坂道」が収録されています。「上に素晴らしい景色が待ってると思わなきゃ 坂道を登らない」「坂道」がとても良かったです。uphill battle、という言葉を思い出しました。

加藤元浩『C.M.B.』25巻 講談社

『C.M.B.』というマンガの25巻目を読みました。この巻には「掘り出し物」「バッグストーリー」「その朝、8時13分」「香木」の4話が収録されています。「あれは勝てないよ 一生一度のラッキーパンチもらっちゃったね」この巻で特に印象的だったのは「バッグス…

たなかのか『すみっこの空さん』5巻 マッグガーデン

『すみっこの空さん』というマンガの5巻目を読みました。「楽しかった寄り道も大人になったら近道ばかり捜している」(辛島美登里「つゆ草のにおい」)「たぶん この世界の夕暮れは問題集の答え合わせみたいにできていて 夕焼け空が赤いのは 昼間は地上に被…